のび太と植物を育てることについて

2024年10月15日その他


ドラえもんの声優として活躍された大山のぶ代さんがお亡くなりになられました。

テレビアニメ「ドラえもん」とともに子供時代を過ごした私としては突然の悲しいニュースに唖然としました。
私に限らず多くの日本人の心に大山のぶ代さんのドラえもんの記憶は刻まれているに違いありません。
謹んでご冥福をお祈りいたします。

ドラえもんと聞いて思い出すお話は山ほどありますが、子供ながらに衝撃を受けた回があります。
「独裁スイッチ」というお話をご存じでしょうか?

例によってジャイアンにイジメられたのび太が「ジャイアンなんかいなくなればいいのに…」とつぶやくんですが、そんなつぶやきを聞いたドラえもんが「独裁スイッチ」という道具を取り出します。

「スイッチを押すだけで邪魔な人を簡単に消すことが出来る」
という恐ろしい説明を聞いたのび太は、その道具を使うことを躊躇っていましたが、またしてもジャイアンに追いかけられて、とっさにスイッチを押してしまうと、なんとジャイアンが消えてしまう。
最初は驚いたのび太でしたが、ジャイアンのいない楽しい生活を送る中、今度はジャイアンのポジションになったスネ夫から「のび太のくせに生意気な」などとイジメられ、今度はスネ夫を消してしまいます。更にスネ夫がいなくなったと思ったら別のいじめっ子が現れる、という負の循環の中、怒りが爆発したのび太は「みんな消えてしまえー」とスイッチを押してしまい、世界中の人を消してしまいました。

そんな状況下でもポジティブなのび太は、町中のおもちゃを独り占めにして満喫するのですが、いつしかそれにも飽きてしまい、ついには孤独に耐えられなくなります。
失意のどん底に陥ったのび太が泣いてドラえもんの名を叫ぶと、なんとドラえもんが現れ涙の再会を果たします。

実は独裁スイッチは独裁者を懲らしめる道具だった、という改めて思い返してもトラウマになりそうなお話です。

巷ではイジメやパワハラに関する話題が事欠かない昨今ですが、職場に限らず、仕事終わりの飲み会でもそれを気にするあまり、上司と部下との関係が希薄しているとか…
またそれが原因で自殺されたというニュースもよく耳にします。
逆に訴えられるのを恐れた上司が部下を放置してしまい、会社や部署に愛想をつかせた若者が転職するという…
なんとも難しい世の中になったものです。

イジメやパワハラに関して、少し極端ですがこんな話を聞いたことがあります。

とある講演会で「イジメについてどう思われますか?」という質問がありました。
その講師の先生は、イジメは絶対に許されないことは大前提という前置きをしたうえで、
「大きな声では言えませんが、例えばインフルエンザウイルスがなくなったらどうなるでしょう。
おそらくインフルエンザとは違う病気にかかることになります。
人体というものは、ウイルスに罹患することで、それに対抗する抗体を体内で作りだし、次に来るウイルスに備え、より強い免疫を持った体になっていきます。
それと同じように理不尽なパワハラやイジメも、それに対抗できる免疫を持つことが出来れば、その人は今以上に強い精神力を身に着けることが出来るのではないでしょうか…」と。

場合によっては大炎上しそうなお話ですが、理不尽にも程がある昭和生まれの私などは妙に納得したものでした。

これと似たようなお話が植物の世界にもあります。
「植物を甘やかしてはいけない」というお話で

植物を大切に育てるあまり、常に水を与え、栄養豊富な環境を整えるとどうなると思いますか?
答えはひ弱な植物が出来上がります。
ひ弱な植物は少しでも水を切らすとすぐに枯れてしまい、また、台風などの風雨に耐えることが出来ず倒れてしまいます。

植物の理想的な育て方とは、天気の良い日にたっぷりと水を与え、徐々に乾燥するように管理することが大切といわれます。

植物は環境が悪化すると生き残りをかけて必死に対処しようとする本能が備わっています。
水分が不足するにつれ、少しでも早く、広く、深く根を張り、わずかな水分を求めて必死に根を張ろうとします。そうして深く広く張った根はちょっとやそっとでは倒れたり、枯れることのない強い生命力を身に着けるというわけです。
特に植えはじめの若い頃に根を張ることは、将来の成長を左右する重要な役割を担うことに繋がります。

こう考えると、子育てや人材育成と似ている、というか通じるような気がします。
手助けしすぎてもよくないし、放任しすぎてもよくない。
適当とはよく言ったもので、このちょうどいい加減が難しく、どちらも非常に奥が深いと思います。

そういえば、大人になって観た映画「STAND BY ME ドラえもん」では、大人になっても相変わらずなのび太が、雪山で遭難したしずかちゃんを助けて、見事、しずかちゃんと結婚、ジャイアンやスネ夫、出来杉君達の祝福を受けるというストーリーでした。

きっとジャイアン、スネ夫からの理不尽に泣きながらも耐え、程よいタイミングで救いの手を差し伸べられたお陰で、しっかりとした強い根を張り、最高の花を咲かせることが出来たのだと思います。